茶封筒の中身は、たったの3万だった。
お袋が、少額の言い訳をする。
「切り詰めて切り詰めて、ごまかしてやっと作ったヘソクリなんだよ。お前も、仕事探さなきゃ、これからいったいどうするのさ?こんな状態なんだから、もう母ちゃんをあてには出来ないよ。だけど…あのケチが、今までお前によく振り込んだもんだよ、それだけでも、儲け物だったけどね」
お袋は、愚痴をこぼすだけこぼし、帰って行った。
さて、困った……紙幣3枚で、これから先どうやって生き延びるか?
増やしに行こう!
俺は駅前に繰り出した。
着いた場所は、俺の大好きな騒音屋。
人の話し声なんて全く聞こえない。
耳に入ってくるのは、バックミュージックと台の効果音、それに銀玉の弾け流れ行く音。
喧しい空気は、俺を安心させる。
静かな空気は、俺をびびらせる。
紙幣3枚なくなるのに、二時間もかからなかった。
リクルート組は、皆、昼間は忙しく、夕方以降にならないと掴まらない。
俺は空腹のまま、太陽が沈むのを待った。
そして、女の勤める会社の前で待ち伏せした。
この女は、何回か、数えられるくらいの回数寝た女だった。



