俺は、父親の顔を知らない。死んだと聞いているが、家には仏壇もなけりゃ、墓参りに行った事もない。

アルバム広げてみた所で、お袋の横に写っている男は、全部ばらばら…両手では足りないくらいの男と付き合ってきた女だ。

本人さえも、俺の親父が誰なのか、わかっていないのかも知れない。

お袋の男…全員には、ある共通した点があった。

それは……皆、優美なやさ男、すらっと細身の男前、今で言うイケ面だった。

正直言って、美形と程遠いお袋は、かなりの面食いだった事がわかる。

体つきも、背が低くコロコロしていたお袋は、無い物ねだりの感覚で、男を選んでいたに違いない。

もしかして、親父は生きていて、そのアルバムの中にいるかも知れない。

子供の頃、何度か親父の事を尋ねたが…お袋が言うに、お前が腹にいる時に事故で死んだんだの一点張り……それ以上の事は何も話さない。

もう、何度聞いても無駄だ。

面倒臭い、そぅ、俺の親父は死んだんだ。

が……死んだ親父に対し、感謝している事があった。

一生涯に於いて、俺はラッキーを貰った。

そぅ、俺は、お袋に…全然、全く似ていなかった。