●吉田ひなこ●

またメール受信音が鳴った。

ディスプレイに野田さん…何度も電話もくれている。

一度も出ていなかった。

メールもこれで三度目…私宛てに携帯持ち、指を動かしてくれる人はこの世に一人だけ。

以前は、佐々木一人だった。

着信音、受信音聞く度に…もしかして?…とまだ佐々木を待っている自分が情けない。

野田からだと知りガッカリする時…胸に痛みが走ると同時に…私を思ってくれる野田に対し、申し訳なかった。

親子3人で泊まった最後の旅館…予約の際、私は同じ部屋を希望した。

シーズンの外れた平日なので、すんなりと希望通りの部屋がとれた。

食事とお風呂済まして、部屋に戻ったら布団が敷かれていた。


ここで寝るのは今日で3日目……。

缶ビール片手に、夜の海を展望する。


 黒い海に月が一つ。

 黒い世に私が一人。

私以上、孤独な人はこの世にいるかしら?

ひとりぼっち……部屋内振り返っても、そこには一組の布団が敷かれているだけ……。

前を見ても、後ろ見ても、右を見ても、左を見ても、下を見ても誰もいない。

この先には誰もいない。