●相田翔一●

預金額目標にゴールした。

思っていたより短期決戦だった。

子供の校区内に、住居付きの目ぼしい店舗を見つけ、契約を交わした。

明日から内装にとりかかる。

菜々子が好きだった…カントリー調の世界を取り入れるように注文した。

世話になった尾崎を、ショットバーに呼び出した。

バーボンロック片手に、カウンターに座っていると、有線から流れるジャズのリズムに乗った尾崎が歩いて来て、横に腰を下ろした。

この男は、何をしても様に…絵になっている。

ホストになる為に生まれてきたような男…自分に合った場所に自分を置いている。

俺も…やっとの思いで、これから自分の場所に行くんだ。

「尾崎…俺さ…今月一杯で店、引き上げるよ。お前には…本当に世話になった」


沈黙になった…何故か尾崎の目線が遠い所を見ている。

と…俺を見た。

「そっか…思ってたより偉く早かったな、よかったじゃん、って言うかさぁ、お前は賢いって昔から思ってたけど…やっぱ今でも賢いわ」

俺が?尾崎の横顔を見た。

それは、無駄な肉ひとつない、引き締まった横顔。