●野田亜紀子●

確か…この辺だった。

この路地の奥だった。

それにしても…この嫌な臭いは何?

吉田ひなこも、後ろから付いて来る。

あなたも私も…可哀想な被害者ね、こんなどうしようもない男に振り回されるなんて……。

こっぴどくとっちめてやらないと、許せない。

それに……ちょうど直也に疲れ退屈していた所だった。

いい八つ当たり場所を見つけたものだわ。

あった!古びれた「愛」の看板見つけた!


  ???????

貼り紙が貼られていた。

「空き店舗 2階住居付き」

   どうゆう事?

扉を何回も叩いてみた…何の反応もない。

再度叩いてみる。

「佐々木~居ないの?」

隣の焼鳥屋の親父が、ゴミ袋を片手に出て来た。

怪訝そうな顔をしている。

「そこの坊主なら、一昨日出て行ったよ」

嘘! 何で! 私はむきになり詰め寄った。

まるで、この親父が加害者みたいに。

「出て行ったって?どこに、どこに行ったのよ?もう帰って来ない訳?引っ越したって事?」