きちんと整理し保管したところで…再び開ける事のないボックス……。
母は、もう二度とこの家には帰ってこない。
でも、私は手を休める事なく、淡々と収納していった。
茶箪笥の上に置かれた雛人形…ここ最近、掃除もしていなかったので、ガラスケースに埃が積もっていた。
綺麗に埃を取り除き、キュッキュッと音がでるくらいに磨いた。
何食わぬ顔をした御内裏様と御雛様…あなた達二人の存在が、そこにあったから悪いのよ。
婚期が遅れるどころか、恋愛まで遅れてしまったじゃない。
本当に雛人形のせい?
科学的根拠のない迷信?
でも…迷信通りの人生になってる事は事実だ…。
もう、何処かにしまおう…重いガラスケース持ち上げ、押し入れまで運んだ。
そして一番奥に納めた。
一段落つき、ほっとした時、急に寂しさに襲われた。
茶箪笥の上が…もの悲しい…哀し過ぎる…。
必ずあった物が急に無くなった侘しさ…。
あの雛人形は、私の人生を今までずっと見てきた、見てくれていた。
昔々、あるところに、お父さんとお母さんと一人娘が住んでいました。



