●吉田ひなこ●

あれから…佐々木と旅行に出かけた。

スケジュールも何もない、行き当たりばったりの癒し旅行……。

食と酒と私を…佐々木は貪った。

これでいいの、あなたの傷口が塞がるなら…私は幸せ……。

もぎ取られた羽を…優しく丁寧に付けてあげた…。

母の容態は相変わらずらしい。

悪くも良くもなっていないと……。

羽をもぎ取った相手は?…友達に裏切られた、それも酷いやり口で…と佐々木は言った。

その友達って男? 女? 聞けなかった。

酷いやり口って、どんな裏切られた方したの?詳しく話してよ…とは言えなかった。

この胸に…私の所へ帰って来た、 それだけでもういいよ…。

説明なんてしなくても、言葉なんていらない。

私は無職になった。

旅行から帰って来ても…朝からずっと一日中、佐々木と一緒だった。

朝10時前からパチンコ屋へ行き、台取りの為、店前に並ぶ。

その頃からか、同じホール内で、佐々木はスロットコーナーへ行くようになった。

スロットはパチンコよりもギャンブル性が強く、勝つ時は半端な額ではなかったが、負ける時も大きかった。