●佐々木仁●

閉店になると、早く帰れと言わんばかりに、眩しいライトが点けられた。

名残惜しい気持ちを残し、俺はハリウッドを後にする。

「じゃまたな…」

「佐々木さん、ありがとう、また……」

この恋に行く先はあるのか…どこに行くのか…先がわからない。

気持ちは、空中にぶら下がった状態……。

明日も朝が早いので、早く帰って寝るわ…とリコのセリフ。

「お昼の仕事終わったら、おばあちゃんの病院へ行き、手術代納めてくるね、佐々木君、本当にありがとう」

とリコは言った。


信用? してない訳ではなかったが…ほんの少し…本当に少し…10%の不信感が…それからの俺の行動を支配した。

あらかじめ、上着のポケットに忍ばせていたニット帽、それと黒いサングラス。

上手く変装出来たかどうかは別として、少しは変わった、俺と気付くのに時間はかかるだろう。

向かった先は、ダンディーライオン属するビル…その向かいのビルで、俺は看板の後ろに隠れていた。

リコ、頼むよ…今、俺の前に姿見せないでくれ……。

昨日のあの後ろ姿は…俺の勘違い…錯覚…幻で終わらせたい。