『綺ちゃん、これ…』
その時、陵のお母さんがあたしに小さな紙袋を差し出した。
グシャグシャで、ところどころ破れてしまっている。
『これ、…綺ちゃんにだと思うの。
最後の最後まで――陵が、大事に抱き締めてたから…』
その言葉に。
思わず、涙が溢れそうになる。
手を伸ばし、紙袋を受け取った。
震える手で、紙袋を開く。
紙袋の中には、小さな箱と封筒。
そして――MD。
小さな箱を、開くと。
「…指輪…」
箱から取り出して付けてみたら、あたしの左手の薬指の大きさにぴったりで…
「なんで…?
あたし陵に、指輪のサイズなんて教えたこと、ないのに…」
ねえ、どうして?
言ってくれなきゃ分かんないよ、陵…

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