「バカ…
優しすぎるんだよ…バカあ…っ!」
たった数時間前の、陵の声を思い出す。
『――ねえ、綺。
俺のこと…好き?』
『い…っ、言えないよそんなこと!』
どうしてあの時、素直に「好きだよ」って言わなかったんだろう。
どうして「大好きだよ」って…
「愛してるよ」って、言わなかったんだろう…?
「ねえ…陵。
あたし、陵のこと好きだよ…
大好きだよ…愛してるよ…?
さっき、言えなくてごめんね…
愛してるよ…陵のこと、愛してるよ…っ」
届くはずのない想い。
どんなに伝えたくても、どんなに叫んでも。
今さら伝えても、届かない想い。
「陵…陵…りょう!」
もう二度と、伝えられない想い。

![[新連載]君への想い、僕らの距離。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)