***
「りょ…う…」
ふと、目を覚ますと。
『綺ちゃん…大丈夫?』
視界に映る、真っ白な天井とカーテン。
声が聞こえた方に、視線を向ける。
『良かった、気がついて…』
そう言ったのは。
陵の、お母さん。
隣には、和也くんが立っている。
陵がいないのは、現実なんだと。
「…っ、」
そう、思い知らされた気がした。
『…綺ちゃん』
陵のお母さんのその声に、あたしは伏せていた顔を上げた。
泣き腫らした真っ赤な目で、陵のお母さんはあたしを見つめて口を開いた。
『綺ちゃん、陵に…
最後に、…陵に会って欲しいの』
小さく、震えたその声に。
あたしは頷き、ゆっくりとベッドから起き上がった。

![[新連載]君への想い、僕らの距離。](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.787/img/book/genre1.png)