運命の弄び

「ちょっと待ちなっ!
零二くんっ!
その前にお客さんに挨拶しな」

「あ……、すいませんっ!
おばあちゃん、いつもありがとうございます」

『おほほ……いいから早く行っておあげ』

「は、はいっ」

薺さんがさっきまで話していたのは常連のおばあちゃんだった。
話しを聞いていたのか、
優しい笑顔を返しながら後押しをしてくれる。
俺は少し小走りで階段を昇った。



……すぐに襖に区切られた部屋が左右に二面ずつ。
左奥の部屋の襖の前に立って、
襖の端の木の部分をこんこんと叩く。

『……お母さん?』

すぐに中から声が返ってくる。
こころなしか、薺さんが言った通り元気が無さそうだ。

「零二だよ、香澄」

「え……?
れ、零二くんっ?!」

「ああ。
……入っていいか?」

「あ……はい、どうぞ」

薄い襖越しに許しを得た俺はゆっくりと襖を開ける。
……綺麗に整頓された清潔感溢れる和室風のその部屋の中央に、
布団が敷かれ、
そこにはパジャマ姿の女の子が腰から上を起き上がらせていた。