運命の弄び

「それじゃ、
いってきますっ!」

僅かな時間の合唱の後、
俺は勢いよく立ち上がって座敷を出た。

「サラ、行ってくるな。
いい子にして待ってるんだぜ?」

わんっわんっ!

居間でおとなしくしていたサラに声をかけると、
サラも声を返してくれる。
『行ってらっしゃい』……とでも言ってくれてるのかな?
そんなサラに笑顔を向けながら、
俺は居間を駆け抜けていく。

「やあ、千歳くん。
お待たせしたようだね?
さぁ、学校へ参ろうか」

白々しい笑みを浮かべながら、
頬を膨らませている真希に声をかけると、
真希は表情を変えず、
俺の顔を指差してから、
ちょいちょいと指を動かして『顔を近づけろ』という合図を送ってくる。

「な、なんだよ?」

「……いいものをあげるわ♪」

なにかを含んだように笑う真希。
くれる?……そして顔を近づけろってまさか……。
それはバカップル夫婦にありがちな朝の……。

「おいおい、真希ちゃん、
気持ちは嬉しいけど、
俺たちまだそんな関係じゃないし……いやっはぁ、
照れるなぁ……なははは」