運命の弄び

そんな家族三人の写真を見ていると、
哀愁の気持ちに駈られるが、
それでもなお気持ちを引き締め直す。

「親父……母さん、
そして……姉さん。
ずいぶん心配かけたと思うけど……取りあえず今日からようやく学校に復帰するよ」

座敷内で独り俺の言葉だけが響く。
一週間前、
……さやか姉さんが二十一の若さでこの世を去った。


八年前両親が亡くなり、
それからはずっと二人で助け合いながら生きてきた。

「……正直、
俺はなんにもしてない。
色んな人が助けてくれたから……、
今日という日が迎えられたんだと思う」

……それは今までだってそうだ。
俺はなんにもしてない。

姉さんは両親を亡くしてからは、
自分の青春時代を捨てて、
俺の母親代わりをつとめて、
家を支えてくれた。
そして水面下では親類や真希の両親がサポートし続けてくれていたはずだ。

それに気付いたのはここ近年の事。
全く自分の迂闊さには呆れるというか腹が立つというか……。
姉さんと二人で生きてきたつもりで、
俺は頼りっぱなしだったんだ。