運命の弄び

「馬鹿零二っ!」

すぐに声が聞こえてくる。

「迎えに来いって言うから来てやったのに、
用意も出来てないなんていい度胸ね?」

「すまん、寝坊した」

「寝坊~っ?!
毎度、毎度進歩しないわねっ」

「低血圧で朝は辛くてな。
この辛さは当事者にしか解らん」

「この間は高血圧とか言ってなかったけ?」

「気の迷いだ」

「はい、はい。
どうでもいいから早くしてよ」

「了解。 少々待たれい」

「一分よ」

「むぅ……せめてあと二分」

「わかったから早くしなさいよっ! バカっ!」

「へーへー」

「ったくっ!」

洗面所と玄関先を隔てた不毛なやり取り。
俺は激しい非難に応えるように、
急いでクリーニングから返ってきて洗濯機の上に放置してあった制服を着込む。
制服は冷え切っていて、
物凄く冷たかった。