運命の弄び

一方の俺も、
持ってきた食パンにテーブルに置きっぱなしのブルーベリージャムを塗りたくって、
そのままかじりつく。
最近の朝ごはんって言ったらこれが基本だ。
朝から台所に向かうのも、
眠気眼で包丁で怪我しかねないし、
またそんな朝早くから起きられない。
それだったら軽くパンで…という方が懸命だ。


ピンポーンっ!

どんどんっ!

「零二~っ!
起きてる~っ?」

パンも満足に食べられないまま、
インターホン、玄関叩き、近所の目をまるで気にしない、といった大声が三拍子で居間に響いてきた。
ふと時計を見ると、
なるほど、真希がいつも迎えに来る時間だ。

「起きてるよ~っ!
今、行くからちょっとそこで待ってろ~っ」

柄に似合わず大声を張り上げる。
聞こえたかどうかは別としてパンをかじったまま、
駆け足で玄関へ向かう。
家の中でも、
こんな冷え冷えとした空気が流れてるんだから、
外はもっと寒かろう。
朝食を妨害した隣人とはいえ、
中に入れてやらなければ可哀相というものだ。