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「あれ?電話が鳴ってる」

ある冬の日の夜。
私こと千歳真希(ちとせまき)は、
お風呂上がりのパジャマ姿で自分の部屋に帰ってきたところだった。
別に冷え症ってわけじゃないけど、
やっぱり冬は湯冷めしないうちにお布団の中に入ってしまうほうがいいもん。

部屋の扉を開くと、
ベッドの上に置いてあった私の携帯電話が、
お気に入りの着信メロディを流し続けていた。

小走りでベッドに近づいてそれを手に取る。
今、夜の十一時少し過ぎ。こんな時間に誰だろ?

液晶の表示を見ると相手の電話番号と共に、
『瑞沢零二』という文字が表示されていた。

「零二だっ!」

私は慌てて通話ボタンを押して携帯電話に耳を傾ける。