運命の弄び

『いや……うん。
……そうじゃない』

「あのね、『うん』なのか『そうじゃない』のかハッキリしなさいよっ」

結局一喝をいれることとなった。
全く、
昔からこういうところは本当に変わらないなぁ。

『その……礼を言いたくてさ』

「え?」

数秒の間を置いて、
ようやく話し出す零二。

『今日までの一週間……、
お前には……その……世話になったし……、
それで……礼も言ってなかったしさ……』

おそらく電話の向こうでは照れ照れで話しているんだろう。
その話し口調が面白おかしかった。

『今日、面と向かって言うつもりだったんだけど……、
いざとなると、照れ臭くってさ……』

「なによ、水臭いわねっ!
いいのよ、別にお礼なんてさ、
知らない仲じゃないんだし」

『いや……お前だから言っておきたいんだ』

「え……」

今までたどたどしいとさえ言える零二の話し方が、
急に強い口調になった。
そして『お前だから』という言葉。
恥ずかしがってはいるけど零二は真面目に話している。