運命の弄び

「よっ、香澄。
久しぶりだな」

「零二くん……」

最初は少し驚いたような表情を見せていたが、
すぐに穏やかな笑みに変わった。
……そう、彼女が薺さんの一人娘、香澄だ。

「ごめんね、こんな恰好で……。
今まで少し寝ていたから……」

「良いよ、気にするな。
俺こそ、起こしちゃったならごめんな?」

「ううん。 ……ここに座って?
零二くん」

「ん、ああ」

香澄が布団の側の床を指しながら勧めてくれたので、
俺も鞄を傍らに下ろして、
香澄の足元に座を置く。

「零二くん、
もう……大丈夫なの?」

「ああ、もう学校にも復帰したしな。
……薺さんから聞いた。
心配かけたな?」

「ううん。
零二くんが元気になれて良かった」

香澄が微笑む。
それに合わせて俺も自然と笑った。
薺さんが力強い笑みで相手に元気を与えるなら、
香澄は穏やかな微笑みで、相手に安心を与える……、そんな感じだ。