愛しいキミへ

俺も悠兄が羨ましいよ──

「…私じゃ忘れさせられないかな?」

上を向いたまま、尋ねてくる。
忘れたい
忘れたいけど・・・

「そんな、利用するようなこと出来ないよ。」

ごめん
もう一度謝ると、上を向いて我慢していた涙が、流れ出す。
目の端から、耳の方へ・・・下へ下へと。

一度流れ出した涙を止める気はないのか、我慢する意味がなくなったのか・・・
下を向き、ポロポロ、ポロポロ、青柳のスカートを濡らしていった。

こんなに俺を想ってくれている子を、何で好きになれないんだろう─

自分を見ているようで、目をそらした。

「あっ。」

青柳を見ないように、違う方を見た時、目に入ったものに思わず声をあげた。

俺の声を聞いて、青柳が顔を上げる。

「どうしたの?…あっ。」

固まっている俺の視線をたどり、その場所を見た。
俺が見ているものを見て、青柳も声をあげた。

目に入ったもの。
それは、仲良く手を繋いで歩く沙菜と悠兄の姿──

「…雅樹君。」

心配そうに青柳が声を掛けてくれるが、そんな声を気にしてはいられない。
見たくないはずなのに・・・目がそらせなかった。

2人は俺に気付くことなく、公園のそばを歩いていく。

次の瞬間、一筋の強い風が吹いた。