愛しいキミへ

「…ごめん。悠兄のこと好きなままでいいって言ったのに…沙菜の気持ちを全部受け止めるって言ったのに…っ!!」

ぎゅーっ
強く強く抱きしめる。
こんなに近くに沙菜がいるのに・・・こんなに抱きしめているのに・・・
心はすごくすごく遠いんだ・・・

「…幸せにできなくて、ごめん。」

フッと抱きしめる力をなくす。
沙菜を抱きしめるのは、これが最後だと本気で思った。

ボロボロと流れる涙。
自分で別れを言っておいて、ボロボロ泣く顔を見られたくない。
抱きしめるのを止めると、沙菜の顔も見ずに背を向け、屋上の出入り口へと向かった。

「雅樹…待って…行かないで…。」

沙菜の呼び掛けに振り返らない。

「待って…雅樹まで離れて行かないで…!」

その言葉を聞き終わる前に、俺は屋上を後にした。
冷たい雪の降る屋上に、愛しいはずの沙菜を一人残してしまったんだ・・・


家に戻るまでの間、流れる涙は止まらなかった。
暗い家の中。
暗い部屋の中。
俺の気持ちのようで、明るくしたくない。

ベッドに腰かけたまま、泣き続けた。

「…うっ…あぁ…あ…っ。」

涙が渇れるまで泣こう
悲しみを感じなくなるまで泣こう

子供のように、声を出して泣いた。

俺の心はこんなにも限界だったんだ──・・・