愛しいキミへ

駅にはすぐに着いてしまい、電車もすぐに到着した。
いくら沙菜の声を聞いていたくても、電車の中で電話をするわけいかない。

「じゃあ、これから電車乗るから。」
「はぁい。気をつけて帰ってきてねっ。」

「「……。」」

お互い電話を切らなくて、無言な時間が続いた。
俺は、自分が先に電話を切りたくなかった。
いつも沙菜との電話は、あっちが切ったのを確認してから、切るようにしている。

「…じゃあね。」
「…!あのさっっ!!」

電話を切ろうとした沙菜を思わず呼び止めた。
──そうだよ
何のために電話をしたんだよ

「なぁに?」

優しく笑いかけた声。
安心して次の言葉を続けられた。

「これから会えない?…ご飯とか、一緒に食べようよ。」

俺は今、沙菜に会いたかったんだ。

「ん〜…良いけど、おごってね♪」

よっしゃっ!!
駅前待ち合わせと決めて電話を切った。
会えるのが楽しみで、電車に乗る足取りが、自然と早くなる。
席は空いてなく、乗り込んだのと逆側のドアの前に行き、寄りかかるように立った。

勉強するためじゃない、夕飯を食べるため・・・デートらしいデートに、顔がゆるんだ。

「…ニヤニヤしすぎ。」

電車の窓に映った自分は口元が緩んでいて、少し恥ずかしくなった。
それでも嬉しさがこみ上げてきて、ニヤニヤが止まらなかった。