「直哉〜!夏休み遊ぼうなっ!」

沙菜が俺を見てくれてるかも──
そんな想いを持った日から、何事もなく穏やかに日々は過ぎていった。
高校は夏休みを翌日に控えていた。

「…俺、毎日のように予備校だわ。」

直哉は俺の誘いを聞いて、ガックリ肩を落とした。
それをケラケラ笑う。

「笑ってるけど、雅樹は受験勉強いいのかよ〜。」
「俺は毎日少しずつ勉強してきたから、少し余裕♪」

そうッ!!
真面目な沙菜は、毎日勉強を欠かさない。
俺は少しでも一緒にいるために、勉強会を申し込む。
だから、成績は良い方なんだよね〜♪
高3の夏休みだって言うのに、少し遊ぶつもり。

「沙菜ちゃんのおかげだろ!?夏休みもラブラブすんだろうなぁ。」
「いやいや。会うって言っても、勉強するだけだから。」

羨ましげに見てくる直哉。
受験勉強で、恋どころじゃないらしい。
告るタイミングを完全に逃したな。

「じゃあ、勉強会混ぜて♪」
「絶対やだ。邪魔すんな。」
「邪魔とかじゃなくて、マジ勉強教えてよ。予備校やだ。」

行きたい大学に学力足りない。
予備校高いって親に文句言われる。
などと、ブツブツ愚痴る直哉。

──行きたい大学ね。
もう決まってんだ。