「ただいま。」


私は心の中でつぶやいた。

旅館に到着し、建物を見上げる。
初めて旅館を見たトキの興奮がよみがえってくるのと同時に、懐かしさも感じた。



チェックインをし、部屋へ案内してくれる仲居さんの後ろをついていく。

私はチラリとアッキーに視線を移した。



やっぱり…。

1人もじもじそわそわしている。
次に何言ってくるか、簡単に想像がつく。
きっと、あのコトだよね。
ちょっと意地悪しちゃえ。


「アッキー、トイレなら向こうにあったよ。」

「あぁ、うん…。そうだなって違―――う!りおぽんお願い!!部屋…。」

「貸しイチ★だからね。」

「………マジで!!??りおぽん優しー。カワイイー。さっすが俺の義妹♪お礼にさ…。」



バッグをゴソゴソし始めるアッキー。
今回は阻止してやる。

ストップの意味を込めて、私はアッキーの前に手を出した。


「ちなみに、アッキーの四角い気持ちは要らないからね。」

「あれ?なんで分かったの?」



ぽかーんとしているアッキーをほっといて、私は夏目センパイがいる部屋へと歩き出した。