「ありがとう!デヴィ!」

「オホホホ、あら、はじめて名前をよんでくれたのね、まみちゃん」

「でもデヴィがぬれちゃう」

「大丈夫、わたくしの羽はこんな雨ぐらい平気ではじきますのよ、オホホホ…」

「それにあったかくて、ぼくなんだか眠くなってきた」

小さなぱぴくんの目は、とろ〜んとしてきました。

でも、自然はそんなことはおかまいなしにキバをむいてきます。
ザザーッザバザバ!ザザーッザバザバ!

「あらあら大変、雨で川の水が増えたみたいね」

ダダーッザザザザ〜…ダダーッザザザザ〜!

「ここにいたら流されてしまうかもしれませんわ」

「川がさっきより大きくにゃってる」

ゴゴーッバシャバシャバシャゴゴーッバシャバシャバシャ…

「しかたありませんわ、じっとしてなさいよ」

「もう足元まで水が…」
と思ったとたん!フワッとからだが浮き上がりました。

「にゃ〜〜〜〜〜〜〜っ!」

「ん〜眠いのに…にゃ〜にゃ〜うるさいよ」

「ぱぴっ!ぱぴっ!飛んでる!飛んでる!」

「いっ?…うぎゃぎゃぎゃ〜!」

そうです、水が足元まできたとき、デヴィが2匹をヒョイとつかんで飛び上がったんです。

「見て見て!さっきいたところがもうなくなってるよ」

「あのままいたら、どうにゃっていたか…」

と、まみさんが恐々見て言いました。

「オホホホホホ、このままおうちまで連れて帰ってさしあげますわ、オホホホホホ」

と、2匹をおうちまで運んで、そしてまたどこかへ飛んでいきました。

「ビックリしたね」

「うん、ぼくはまだ飛んでる感じ」

「飛んだにゃあ」

「うん、飛んだ」

「空を飛んだネコっているのかにゃあ?」

「空を飛んだネコになったんだ」

2匹は濡れたからだを舐めながら、毛づくろいをして、あったかい押し入れの毛布の上で丸くなりました。

『はね』 完