最後の直線!

さぁ各馬一斉に追い出しにかかりました!

先頭はオイドンスープ!

オイドンスープ先頭!

おっと!外からすごい脚!

アタシャミラクル!アタシャミラクルだ!

差しきった所でゴールイン!


またかよ・・・
オイドンスープの単勝馬券を握り締め、俺はつぶやく。

絶対勝てるんじゃなかったのかよ。
ふざけんなよ・・・

俺は呆然と立ち尽くし、空っぽになった財布をみつめた。

半ば人生駄目になってギャンブルにのめり込む一人の男。

顔には全く生きる気力が無いように見えるのだろう。

競馬予想会社に手を出し、金だけは持っていかれる。

自分の予想も信じられず、人に頼っては、金だけが無くなる。

そんな日々が続いていた。


「兄ちゃん、またオケラかい?」

変なおっさんが、語りかけてくる。

俺は、無視してやりすごそうとした。

「顔に書いてあるよ、負けましたって」

ズバズバとうるさいおっさんだ。

俺は少しムッとして答えた。

「なんなんすか!」

「まぁ、そんなに怒りなさんなって」

不敵な笑みを浮かべるおっさん。

「兄ちゃん、競馬で勝ちたいんだろ?」

俺は何度この『勝つ』と言う言葉に騙されたのだろう。
頭では、絶対勝つなんて事が無いとわかっていても、期待感と言う魔物にとりつかれる。

「あぁ、勝ちたいよ」

「いい男がいるんだ。付いて来な」

おっさんは俺が「勝ちたい」と言うと間髪入れず、俺の腕を取って歩き出した。