人混みを抜け、その男…西郷四郎は歩いていく。

「……」

争いを聞きつけて集まってきた他の警官達に伸びている異人を任せ、藤田は歩き出す。

無論、四郎を追って。

…呼び止めるつもりはなかった。

職務質問をするつもりもない。

ただ無言で。

一定の距離を置き、藤田は四郎を尾行する。

…四郎が気づいているのはわかっていた。

あれ程の使い手だ。

気配を読む事など造作もない事だろう。

ましてや藤田は、敢えて気配を殺さずに四郎を尾行している。

気づいてくれと言わんばかりにだ。

少しでも戦いの場に身を置く者ならば、これしきの気配は読めて当然であった。