記憶を持つ者

いい加減にしろ、と、駆け寄り魔王と私の間に割り込んだ白牙が、彼を批判していたけれど、よく聞こえなかった。

聞こえたのは、内側から響く声。
ドクン、と心臓が大きく拍動したのを感じた直後、急激に意識が遠のいて……


聞いたのだ。


私だけど私ではない、声を。



―――どうしたの?簡単でしょ?


―――できないなら、手伝ってあげる。