記憶を持つ者

一瞬、白牙は言葉に詰まった。


―――アノ方ハ…俺ノ名ヲ、ドンナ風ニ呼ンデイタ…?


“彼”についての記憶を失っていたはずなのに、昨日ヤイバを見た瞬間にその容姿をはっきりと思い出した白牙は、自分の名を呼ばれた事で余計に戸惑いを隠せなくなっていた。


「白牙様?」


「あ……」


もう少しで彼の名を呼びそうになったのに、その名前が……どうしても、彼の名が思い出せない。

あんなにも、大事な存在だったのに。