記憶を持つ者


声にならない程の囁きの後、ヤイバは布団から僅かに出ていたユイの手をすくい上げ、甲に口付けをする。

それは、祈るように恭しく、優しい口付けだった。


「必ずや、貴女の側でお守り致します。

貴女が記憶を取り戻す、運命の時まで―――」


その誓いの声には何故か、辛さが滲んでいた。

それは、これから何が待ち受けているのか、知っていたからかもしれない。いや、知る事が出来る立場にいるから、と言った方が正しいだろう。