記憶を持つ者

眠っているユイは、健やかな寝息をたてている。

魔界とはいえ朝は夜よりも闇が薄くなり、前よりも白くなった肌が、薄闇の中に蝋人形のように浮かび上がっていた。
本人は気にしている赤みを帯びた頬が、今は真白にしか見えない。

息遣いが聞こえなければ、不安になってしまう程の静かな眠り。


そっと、頬にかかる髪を払ってみる。


ヤイバが触れた事に気付かず、ユイはまだ夢に浸っている。


「…永遠に、触れる事など叶わないのだと思っていた…

やっと…」


やっと会えた。