私は今まで普通にこの魔界で寝起きしていたが、条件があると告げられた事を思い出した。
それで、その選択肢の一つだった『魔王のものになる』というのをはねのけた事も。

白牙から『流されるな』と言われていたので、躊躇することなく拒絶したのだ。


「あいつは、お前が自分に仕掛けるように、巧く事を運んでいる。俺も気付いてはいたが…問題はないと思ってたからな。
レンが何をしたいのか…何を望んでいるのか…分からなくもない。
ただ、ユイを関らせるべきではなかったかもしれない。

まさか……」


そう言って、私ではなく兜をしたヤイバの顔を見る彼の目には、

何故か、哀しみと…

懐かしいものを見るような光がたたえられていた。