記憶を持つ者

おどおどした調子になるのは、仕方がないだろう。相手は刀だ。しかも鞘に収まっていないので、もしも怒りを買って切りかかられでもしたら、一溜まりもない。

再度声を掛けようかと迷っていると、太刀から何かが響き、それが波のように伝わり、体を通り抜ける。その時に、波が音になった。

刀の声を、はっきりと聞いた。


「私が、呼んだ…?」


―――貴女ニ、呼バレマシタ。


それが、返事だった。

記憶を辿り、いつ自分が呼んだのかを思いだそうとして悩んでいると、再び声が聞こえた。




―――断チ切ル、モノ。