記憶を持つ者


これ以上この状態でいたら、自分が不利になる。

意を決して、口を開いた。


「―――誰?…何の、用?」


背後の気配がザワつき、相手が動いたのが分かる。それを見逃さず、振り向く恐怖を乗り越え、一気に身を翻した。


「―――…!?」



そこにいたのは、


いや、あったのは、



「か…刀……?」



一本の、抜き身の太刀だった。



その、真っ直ぐで闇の中でも光る刃に、危険を忘れてフラフラと近寄る。…実際、無意識だった。
太刀に引き寄せられたのだ。