記憶を持つ者

一瞬ビクッとしたが、不思議と、それ以上の驚きや動揺はなかった。戻ったのだ、と、それしか考えられなかった。

むやみに動くと危険かもしれないので、目だけを動かして暗い部屋を見渡し、式神に明かりを灯させる。

自分でも様々な術を操るようになった最近では、今のような事が起きても以前のようにパニックにはならない。

冷静に考えれば、自力で解決できる程度の知識は得たから。


明るくなった部屋は、探検に出る前と何も変わらない。


「…って……んなわけ、ないか。やっぱり。」


小さく笑って、神経を後ろに集中させる。

部屋は変わっていないが、

私の背後には、何かがいた。