記憶を持つ者

だが私には、そんな事をダラダラと考える余裕などあるはずがない。今は、何としても、上手く部屋まで戻る必要がある。


…ある、のだけれど。


この時、心に引っ掛かった言葉は、私の思考を全てさらっていた。
今の状態も、立っている場所も。
まるで記憶の穴から抜け出たように、思考から消えた。


エ・ニ・シ、を…


「…切る。」



瞬きをする間に、私は与えられた部屋へと戻っていた。