記憶を持つ者


「もう一度聞くが、私のモノになる気はないか?」

「…え…」

「そうすれば、魔界にいる事が出来る。」


答えようとしたまま、
口を開けたまま、

私は動きを止めていた。


―――そんな条件、有り?

でも、魔王は、顔は幾らか穏やかだが、冗談を言っている様子ではない。

咄嗟に白牙を見やると、険しい顔をしていた。


「本気、ですか?
…ねぇ、白牙。それしか、私の選択肢はないの?」