記憶を持つ者


「あーそういえば、何で魔界に来たのかまだ聞いてないよ?」


「魔王に会わせる必要があったからだ。ユイに会わせ、魔族が“記憶を持つ者”に手を出せないよう、護ってもらうために…。」


思いがけない返事だとは感じなかった。

ニコルとニカルがいることで、元より動物好きな私はだいぶ落ち着いていた。

だから、最初よりも状況を理解できた。

――始めに言われた、衝撃的な事に比べたら、軽い話だったからかもしれないけれど。


「ユイ。…魔王が何を言っても、流されるなよ。」


白牙のその台詞を、扉の向こうから魔王が聞いていた事なんて、どうして知る事ができただろう。