先ほどとは全く違う、柚葉の自信に満ち溢れた笑顔。


仲良さそうに話す2人はまるで恋人同士のようで、僕を苛立たせ、更なる苦しみを生み出した。





章「柚葉…」





小さく名前を呟き、どうしようもないまま僕はその場を立ち去った。


僕の出る幕なんかないやんか。

あの2人、お似合いやしな…



結局はこんなことの繰り返しか。

お互いを思い合うことなんて、きっとないんやろ。


考えが甘かった…?






さっきまでの自分が、アホらしい…
柚葉「ほんなら…行くな?」

丸「ん、いっちょ頑張ってき!」

柚葉「本間にありがとうな?こうさせてくれたん、隆平くんのおかげやから…」

丸「恥ずかしいことは言わんでええねん、ほら。行ってき」

柚葉「…ありがとうっ!」





あたしは早足で公園を駆け抜けた。

来た道を辿るように戻り、立ち止まって深く深呼吸する。


大丈夫、大丈夫。




何度も自分に言い聞かせた。

自分の意思を持って、気持ちが折れてしまわないように。


思いをちゃんと伝えられるように。

大丈夫…






もうすぐ家につくという道の角を曲がった瞬間、前方に見覚えのある背中が見えた。

あの白いマフラー、あたしがプレゼントしたもの。


大切な、大切な人のために一生懸命気持ちを込めて編んだマフラー。







柚葉「章大っ!」





振り返ればそこに見えるあたしの姿に、あなたはどういう顔をしますか?
章「…」





振り返った章大はびっくりしたような顔をしたと思うと、急に切なそうな表情を浮かべた。


あたしはそんな章大に駆け寄り、肩で呼吸と整えた。





柚葉「章大、あのな…」

章「良い、何も言わんといて」

柚葉「…え?」

章「苦しくなるくらいなら、わざわざとどめなんか刺されたくない」

柚葉「っ…」