「あ、ぎゃああ」

 ズボッ!
 見事やわらかい場所にヒット。
 …足が完全にはまってしまった。
 ここで厄介なのがブーツだ。
 無理に足を抜こうとしてもブーツだけが穴の中に取り残されてしまう。

 「…ど、どおしよう」

 この状況は何度か経験したことがあるけどこうなるともう、誰かがここを通るのを待つしかない。
 昔は必ず誰かと一緒に帰ってたからなんとかなってたんだよな…なんて今頃思い出してもしょうがない。

 「…って言ってもなぁ…」
 
 車より高いところにいるから、時々通る運手主さんたちが気がつくはずもない。
 そのうえこの道は、住宅街近くの裏道で人がほっとんど通らない。

 「ああーなんでこんなことしちゃったの、私は!」

 ちょっと泣き出したくなるような気持ちで、叫ぶ。

 「だ~れ~か~!!」

 雪の厚い壁は、私の声なんかどこにも届けてくれやしない。
 
 「もう、いやだっ」
 
 なんだか泣けてきた。自業自得なんだけど、こうも運に見放されたものか。
 寒いし、もう、足とか手の感覚なくなってきたし。
 人、通らないし…だいたい、独りで帰ってたこともそうだ。
 先輩を見つけ出せなかったことも、そう…先輩!
 …先輩がもう、卒業しちゃうことも。