唯のドラマ出演が決まった。
火曜日9時の人気ドラマ枠。
準主役の重要な役回りを演じる。

撮影が始まるまで頻繁に電話がかかってきた。
嬉しい反面、初めての出演するドラマが連続ドラマとなり、心配なのである。
あつしは、唯の話を聞き、励ました。

2ヶ月後。
ドラマの放映スタート。
ドラマは主人公を演じているアイドルの人気とストーリーの良さに引っ張られ、高視聴率でスタートした。
インターネットで検索したところ、二面性のある難しい役を演じている唯の評判も上々である。

数日後。
「演技の練習をしたい」、と唯はあつしのアパートを訪れた。

「ドラマ高視聴率みたいだね」
「うん、そうみたい。今は演技をしているのが楽しいから視聴率は気にしないけど。でも、いろんな人が見てくれているとおもうと嬉しい」
「ところで、今度はどんなシーンをやるの?」
「キスシーン」
「ああ、キスシーンね。もしかして、それを練習しに来たの?」
唯は頷く。
唯は あつしと一緒に住んでいた時、朝、キスをして起こしたり、ふざけてキスしたことはあったが、ちゃんとしたキスの経験がない。
「あっちゃんは普通にしていて」
唯は あつしの前に座ると顔を近づけた。
「いたっ」
鼻と鼻がぶつかり、唯が痛がる。
「あっちゃん、ごめんね」

唯は鏡を使って色々な角度から確認しながら、夜中までキスの練習を続けた。