戸惑う真里とは対照的に綺羅にはもしかしたらという一つ、気になることはあった。
真里が張った結界により、霊たちが力を増幅させた。
それが綺羅の考えだった。
放置されていただけの状態なら、霊も焦りを感じることはないが、結界を張られるということは、自分たちを退治する力を持つものが自分たちの存在に気づいたと感じる。
それによって、今まで隠していた本来の力を出してきたと考えるのが一番すんなりといく答えだった。
「とにかく、ここで悩んでても仕方がない。行くしかないだろ。ここまでなってるんだ。もう見て見ぬふりなんてできる状態じゃないからな」
「う、うん………」
真里がゴクリと喉を鳴らす音が綺羅の耳にはっきりと聞こえてきた。
まっすぐ歩いて行き、綺羅は結界を簡単に潜り抜ける。
「うわ~…、すごい」
「なにが?」
意味もわからず感心する真里に綺羅は眉を寄せて怪訝な表情を浮かべた。
まだ、結界との境を越えただけでプレハブの入り口にも立っていない。
それがどうしてすごいなどと感心の言葉が出てきたのか綺羅にはさっぱりわからなかった。
「私の結界になんなく入り込んだ人って初めてだったから。いつもね、無理に入ろうとするとみんな苦しそうになるの。だから、結界に入り込まないっていう利点もあるんだけど………」


