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SHRを終え、真里との約束の通りにプレハブ前に来た綺羅は、神妙な顔つきでプレハブを見つめていた。
結界を張ってからまだ数時間しか経っていないというのに、あの時には感じなかった霊力が決壊越しにヒシヒシと伝わってくる。
綺羅は無意識のうちにゴクリと喉を鳴らした。
危険だから退治しようという気持ちは今もある。
だが、まさかこれほどの霊力とは………。
真里との約束をする前の自信はすでに消え失せようとしていた。
結界を通して伝わってくる力がこのぐらい。
ならば、結界なしでの力はどれほどになるんだろう。
真里の結界能力がどれほどなのかわからない綺羅にはその判断ができなかった。
「ごめんね~、綺羅くん。ウチのクラスHRが長くって~」
綺羅がプレハブの中の悪霊の力に対して真剣に悩んでいる時に、なんの悩みもなさそうな暢気な声が聞こえてきた。
綺羅は無視をするわけにもいかなくて振り返る。
すると、へらへらと笑い、手を振りながらやってくる真里の姿が目に入ってきた。
こ、こいつ、今からのことちゃんとわかってるんだろうな。
「ごめんね~、待った~?」
「いや」
綺羅は短く返事を返すとすぐにプレハブの方へと向き直す。
「そっか~、よかった~…。いつもはすぐに終わるのに、今日に限って先生の話が長くって」


