綺羅の『今回だけ』という言葉に、真里は心を決めたのかコクリと頷いた。
それを確認した後、綺羅はてきぱきとこれからの予定を話し出す。
「じゃあ、今すぐというわけにはいかないから、今日の放課後。何か用事ある?」
「あ…、えっと………、ううん。大丈夫」
はっきりとした答えではなかったが、綺羅はそのことは気にしないことにした。
「じゃあ、放課後。ここで」
「うん」
ちょっと強引だったかな?
そう思いながらも、綺羅はそうすることしかないと思っていた。
あの時、真里には言わなかったが、今は真里の結界で閉じられているからわからないが、日に日にプレハブから漏れてくる霊気は強くなっていた。
いずれ、プレハブに収まらない事態になると綺羅は思っていたのだ。
だからといって、まさか自分から率先して何かをしようと思っていたわけではない。
このままでは危険だと思っていただけだ。
だけど、真里と出会ったことで綺羅はなんとかできるかもと微かな期待を持ってしまった。
自分自身が持っているこの能力に自信が持てたのかもしれない。
それと、真里が深青の知り合いだから。
思わぬところで思いもよらない名前を聞いた。
それだけで自分でも可笑しいと思うが、綺羅は勇気が湧いてくる。
あの時のような気持ちになれる気がするのだ。
深青……、お前って俺の中では全能だな………
綺羅は自嘲気味に笑みを浮かべながら空を見上げた。


