それは、綺羅たちが中学生になり少し経ってからのことだった。





 人気のない中等部と高等部の校舎が隣接する裏庭の隅に古びたプレハブが建っていた。


そんな人気のないところに何の意味も持たない古びたプレハブ。





 生徒というものはそういうものに何かしらの因縁や噂話をつけたくなるものだ。





 綺羅が中等部に入った頃には、その噂はとんでもない話へと発展していた。


プレハブはただの意味も持たないプレハブではなく、今では夜な夜な霊が現れるとまで言われるようになった。


それだけではなく、そのプレハブに近づいた者は呪われるとまで言われるほどになっていた。






 噂というものは怖いもので、ただの悪い噂は人の負の念を吸い寄せ、いつしか悪霊の住処へと変貌を遂げる。





 その霊気を、綺羅は中等部の校舎で毎日、ひしひしと感じていた。





 ある日、綺羅は廊下に出て、じっとそのプレハブを見ていた。





 すると、そこへ恐る恐るという感じにだが、ゆっくりと近づいている人物に目が留まる。


ただの好奇心から近づく馬鹿な奴なのかと思っていたが、その人物が何かしらの印を組んでいる姿を見て、綺羅は窓から身を乗り出した。





 あれって………