「綺羅くん?」


「こういう仕事を請け負うには俺たちには知識がないんだ。昨日のあの化け物を見たことで俺はそのことを身に沁みて思い知らされたよ」





 そう。


この仕事はそんなに簡単なものじゃない。





目の前に自分の力ではどうにもならない悪霊が現れてことで綺羅は自分の力が万全のものではないということを思い知ったのだった。


「今までは運よく、俺たちでも対処ができるような霊が対象だった。だけど、これから先もその幸運が続くとは限らないだろ?」


「それは………」





 何かを言いかけながらも、口を噤む真里。


その仕草が、真里も綺羅の言葉に少しは納得していることを表していた。


「昨日は偶々、わけのわからないことがあって、俺は助かったけど、あんなことがまた起こるとは俺には全く思えない。そう考えると、この辺りで俺たちはこの仕事を請けることをやめるのがちょうどいいと俺は思うんだ」





 真里は俯いたまま、何かを考えているように綺羅には見えた。


そんな真里を納得させるために綺羅は続ける。


「大体、俺たちってこういうことをするために今の部活を立ち上げたわけじゃないと思うんだけど」


「えっ? あ………、うん、そうだね………」





 真里が向けた視線を追うように綺羅も窓の外から見える、小さなプレハブへと視線を向けた。





 全てはここから始まった―――――