たとえ、もしこれが告白だとしても自分はその告白を受けるつもりなんて絶対にない。


そんな確固たる自信が綺羅にはあった。たぶん、あの時のような幼いながらも胸が焦がれるような恋を自分はすることなどないだろうと………。


それに、自分はもう………


「じゃあ、行ってきます」


靴を履き、玄関の扉を開けるとそこには眩しい光が自分を射すように輝いていた。


「行ってらっしゃ~い」


後ろてに聞こえてくる母の声を聞きながら、綺羅は玄関の扉を閉めた。







 この家に引っ越してきてから、もう7年が経とうとしていた。


初めは父の転勤からの家族全員の引越し。


だけど、その父も2年前にまた別の地方への転勤を命じられ、結局は単身赴任で行くこととなってしまった。


いずれ、離れることとなるのなら、あの時、あれほど嫌がった引越しをしなければよかったのではないか。


無理に家族で暮らすことを選択する意味などあったのかと何度も思わずにはいられない。


綺羅は無造作に制服のポケットに手を突っ込むと、手に触れたペンダントを取り出す。


朝日に晒され、きらりと光る瑞々しい蒼い光。光を当てるだけで幾通りもの蒼い光を放つこのペンダント………。


これだけが、今の綺羅と彼女を結ぶたった一つのもの。


7年も経った今、あの幼い日のことは全て嘘なんじゃないかとさえ思う。


だけど、このペンダントを見るとそれだけであれは嘘なんかじゃない現実にあったことだと思わせてくれる。


そんなことをもう何回も綺羅は繰り返していた。





顔を伏せ、ギュッと唇を噛み締めてから綺羅はそのペンダントをもう一度自分の制服のポケットにしまった。