このペンダントだって、ただのお守り。


気休めだけの。


今でこそ、ここに何かしらの細工をしていることもあるかもしれないが、あの頃の自分たちの幼さでそこまでの気が回るとは思えなかった。


「じゃあ、一体あの光は何だったの? それに、綺羅くんが見たっていう悪霊はどこに行ったというの?」





 そんなことはこっちが聞きたいぐらいだった。





 確かに目の前には強い力を持つ悪霊がいた。


それに………。





 綺羅は自分の腕をぎゅっと掴む。





 ここに残る、痛みがこれは夢などでもなければ幻でもないということを証明していた。


じゃあ、真里の言うとおり、あの悪霊は一体どこに?





 わからない………。


だけど、自分だけではなく、真里さえも今この場で不穏な気配を感じることはないということは、もうすでにこの場所にはあの悪霊はいないのだろう。


それとも、あれほど強い力を持つ悪霊だ。


もしかしたら、自分の気配を隠したりもできるのだろうか。


それならば、すぐにでもこの場を離れたほうがいい。





 この場所にいながら、自分の目の前でことが行われていたにも関わらず、全く状況を把握できていない今は無駄にこの場所に留まっていることは危険かもしれない。





 綺羅はスッと顔を上げると、未だに周囲を見渡しながら手帳に何かしら書いている慈に声をかけた。


「相良。そろそろ、切り上げてここを出るぞ」


「えぇ!? ちょっと、待ってよ。何よ、突然。私にはまだまだ報告書を書けるまで調べる義務がっ! って、ちょっと、引っ張るな!」





 素直に「はい」と頷くとは思っていなかった綺羅はごちゃごちゃと反論する慈の首根っこを掴むと強引に引っ張って行った。