見るからに、何か出そうだよな………。





見てすぐの綺羅の素直な感想がそれだった。







 目の前に建つ建物は、年代を感じさせる洋館。


夜ということもあり、屋根や壁の色などはよく判別できないが、ここ何十年の間に建てられたという感じではなさそうだ。


昭和の戦火を逃れて、建っているほどの貫禄があった。





建物の周りには手入れがされていないために伸び放題になってしまった草木。


そして、ところどころ、持っている懐中電灯で照らすと張り巡らされたくもの巣が不気味に光る。







 気持ちわりぃ………







 綺羅がそんな光景に眉を顰めているにも関わらず、慈は両手を腰に置くと、


「さあ、行くわよ!」


と、張り切って声を上げた。


「本当に俺も行かなくちゃダメなのか?」


往生際の悪い柏葉は、未だに納得がいかず、慈に問う。


だけど、返ってくる答えは先ほどと同じ、「当たり前でしょ」の一言だった。







 がっくしと項垂れる柏葉を見ながら、綺羅もまた、行きたくないと思いながら仕方なく足を進めた。