真里はいつも控えめで自分から前に出るタイプではない。


これまでだって、長い付き合いだが、綺羅は今まで真里に腹が立ったことなどなかった。


だから、真里から『責任』という言葉が出てくることにピンとこない。







 「あのさ~…、俺も一つ質問なんだけど………」







 綺羅が真里のことを気にしていると、恐る恐るといった感じで控えめに手を挙げながら、柏葉は聞いてきた。


「どうして、いつも関係のない俺まで、ここに付き合わされるわけ?」


そんな柏葉の質問に、慈はニヤリと口の端を上げて笑う。


「そんなの決まってるじゃない。あんたは、何かあった時に私の盾になるためよ」


とんでもないことを、あっさりと言う慈。


そんな慈の言葉に、柏葉は一瞬固まるが、ハッと気づくと身を乗り出して抗議した。


「ひっでぇ~! 俺、関係ないじゃん! 毎回言ってるけど、俺、無力だし、何の役にも立たないし、第一! 襲われた時とかはどう対処すればいいんだよ~! 襲ってきたとしても、全然見えないし!」


あまりの恐怖のためか、言っていることの筋があまり通っていない。


「大丈夫だよ、柏葉くん。その時は、私が守ってあげるから」


にっこりと微笑みながら、優しい言葉をかけてくれる真里の手を柏葉はギュッと握る。


「ありがとう、真里ちゃん」







 真里の手を握っている柏葉を横目で見ながら、綺羅は視線を目の前に立つ建物へと向けた。